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一 括 講 読

テーマ:ジョイ猫物語 第二章(13)
訪問者は白い毛の若い雌猫ラブであった。若い雌猫が一匹で若い雄猫を訪ねるのは、特別の場合であり、珍しいことなのだ。猫社会では、非常に勇気のいることである。
急いでドアを開けたサムの足元をすり抜けてジョイの前に立つラブは、鈴の音のような美しい声で歌うように話し出す。
『「ありがとう〜ジョイ!メイがとても嬉しそうだったの。心に秘めていた悩みを打ち明けられたリーダー猫は、あなただけだったそうなの。黙って親切にきいてくれたんですってね。メイの友人として私は、あなたに感謝の言葉を言いたくって、思いきって訪ねてみたの。本当にありがとう」』
そう述べてから、恥ずかしそうにすぐに立ち去った。ただ感謝を表しに来たラブ。
だが、この感謝の一言は、ジョイにとってどれほどの慰めになったのかを、おそらくラブ自身は知らずに帰った。
ジョイの眼が輝き出し、サムに食事をねだり始める。
「おやおや、急に食欲がでてきたのかね?ジョイも、そろそろ恋の季節かね。それにしては、今は冬じゃがの」
笑いながら、ほっとした表情でジョイの食事の準備に動き出すサム。恋の予感は別にして、ジョイは思考ループから脱け出すきっかけをラブから貰ったのであった。
 翌日、ジョイはリーダー猫達と猫式連絡網を活用して、夕暮れ前に公園の木陰で集合を約束した。リーダー猫五匹だけでの話し合いである。若いジョイの語る内容に、真剣に耳を傾ける猫達にジョイが懇願したのは、ローズメイに五匹で謝罪をしたい、というものだった。
そして、今後の「愛の掟」の斉唱に加える言葉を提案した。それは、あの老猫マリアがジョイに語った言葉そのものだ。
それは
「愛は、他の猫を尊重し、不必要に干渉せずに信じて見守る!」
他の四匹は、すぐに賛成したのである。



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