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一 括 講 読

テーマ:ジョイ猫物語 第三章(8)
 六匹の猫たちを前にして、ベンチの上のリーダー猫の一匹が口火を切る。
さきほどまで寒さに震えていた老猫だ。
『「これは、儀式ではないので合図は省きます。早速ですが皆揃ったので本題に入ります。ではー」』
と、次のリーダー猫へ発言を促す。まるで軍隊のような規律正しさで集まりは進行していく。
二匹目の老猫が説得力のある話し方で始める。
『「この度は、この街の我々猫グループにおいて、聞き捨てならぬ噂話に翻弄(ほんろう)されている仲間が増えてきていますのじゃ。集まりが開始される春まで待とう、と言う意見もあったのじゃが、なにしろ重大過ぎる噂であるので、猫社会に分裂が生じておる。噂を信じる猫と信じない猫との争いまで起こっとる。
それで、ジョイを除く我々で調査をさせて貰ったのじゃが・・。ま、ジョイを除いたのは、噂の的であるラファエルの親友であると言う理由からじゃ。公平でいることが難しかろうと思ってじゃなー。そして真実を突き止めたので、今ここで明かすことにする。
それでじゃ、君達六匹がこれから出会う猫、出会う猫、全ての仲間に、自分の口から伝えるようにして欲しい。そうすれば、春の集まりが開始される頃には、噂話による悪影響は仲間全体から解消されているだろうと考えたのじゃよ。これは、裁判ではないので誤解のないようにして貰いたい。裁く権利など同じ仲間の猫同士にはないからのう。正直に答えて協力して欲しいのじゃ。ではー」』
と、次の三匹目のリーダー猫へとバトンタッチが行われる。
彼はおもむろに語りだす。
『「では、ローズメイ!あなたの家の火事の原因は何であったと、人間たちは結論したのかね?一応この場にいる皆の前で話してください」』
ローズメイは隣のラブからうながされて話し始める。
『「はい。人間の警察の話ですと・・・暖炉の前に散らばっていた干草の一つに暖炉の火が点火して、そこからまた干草のくずへと移って・・・やがて絨毯(じゅうたん)にまで広がったことが分ったそうです」』
と、語りうつむいてしまう。



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